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「銘仙図鑑」の年代・産地推定について [銘仙図鑑]

2012年6月23日(土)  「銘仙図鑑」の年代・産地推定について

数日前、銘仙について研究をされている神戸女子大学被服平面構成研究室の方から、現在、私がブログに(ごくたまに)掲載している「銘仙図鑑」の中の産地と年代について「どのように推定されたのでしょうか」という質問がありました。

コメント欄では、十分なことが書けないので、こちらに改めてお返事します。

「銘仙図鑑」に 「※ 産地と年代は、私の推定なので当てになりません。?は『…かな?』、??は『…かもしれない』くらいのニュアンスです」と注記してあるように、銘仙の産地&年代推定はきわめて困難です。

銘仙があまりにも多種多様、かつ生産量が膨大であり、その一方で年代・産地が明確な製品が保存されていることが少なく、推定の根拠となる基準作例が乏しいからです。

私の産地・年代推定は、実際に銘仙の生産に携わった方や、銘仙コレクターの方に教えていただいたことに加えて、若干の技術史的な知識に基づいています。

ただし、上に記したように確度には自信がなく、あくまでも「かな?」「かもしれない??」というレベルの確度の低い推定です。

若干の技術史的な知識というのは、たとえば、次のようなものです。

・ 金糸・銀糸を織り込むのは昭和7~8年(1932~33)に流行した。
・ 半併用の技法は、昭和9年(1934)に足利で開発された。

これらについては、制作年代の上限を示すだけで、決定的なものではありません。

産地推定については、ひとつ厄介な問題があります。それは、産地間での意匠や技術の移動です。移動と言えば聞こえはいいですが、はっきり言えば「盗用」です。
苛烈な産地間の競争の中で、意匠や技術の模倣・盗用は当たり前のことだったようです。

足利で開発された半併用の技術もたちまち他の産地が模倣しますので、足利産の決め手にはなりません(やはり、「本家」の足利で多く用いられたようですが)。

意匠も、捺染用の型枠が産地間で売買されることもあったそうですし、あるデザインが売れ筋になれば、熟練された職人の手で反物からそっくりに型枠を起こすことは難しくないそうです。
実際、足利と秩父でほぼ同じ意匠が使われていた例を知っています。
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↑ 銀鼠と濃紺の太縞に巨大な萩の柄の足利銘仙。
ほぼ同じ柄が秩父でも織られている。
どちらがどちらを模倣したかは不明。

産地については、意匠の特色(傾向)は、ある程度、言えても、年代推定よりもさらに難しく、確度は下がると思っています。

以下、私が認識している三大産地の特色(傾向)を列記します。

【秩父】 
はっきりした「玉虫」光沢は秩父の得意技。
そのため、緯糸に暗い色を入れるので、全体的にうす暗いトーンのものが多い。
経糸捺染&解し織りの大きな植物柄が得意。
逆に併用絣による精密な幾何学柄は少ない。
着尺の生産は、ほぼ戦前に限られる。

【伊勢崎】
併用絣による精密な幾何学柄は伊勢崎の得意技。
全体的に意匠・技術のレベルが高い(そうでない物もたくさんあるが)。
戦前は三大産地(伊勢崎・秩父。足利)の生産量が拮抗しているが、戦後はほぼ伊勢崎の独占状態になるので、戦後的な意匠は伊勢崎産である可能性が高い。

【足利】
半併用の技法は、発祥地だけに得意技。
技術レベルを示す細かい柄(絵画風、幾何学柄)が比較的多いが、精度は伊勢崎にやや劣る。
生産の中心は、戦前期の後半(昭和7~12年=1932~37)。

ということで、いたって頼りないものです。

こうした確度の低い情報をネットに載せることについては、私自身、迷いもありました。

ただ、銘仙を日本近代の服飾文化の豊かさを示す美術・学術資料として扱うならば、いつ、どこで作られたかということは基本情報であり、年代と産地の情報欄を空白のままにしておくことは許されないと思ったからです。

今後、為すべきことは、制作年代、産地が確定できる作例を1つでも多く集めること、当時の写真資料(残念ながらモノクロ画像ですが)などから意匠データを集めること、各産地に保存されている見本帳やデザイン帳の調査を進めること、そして、それらを誰もが利用できるようなデータベース化することだと思います。

そうした作業・研究は、私のような一個人が、しかも本業の片手間に行うのは不可能なことで、やはり大学の研究室のような機関で進めて欲しいと思います。

それについて、私にお手伝いできることがあるなら、よろこんでいたします。

銘仙図鑑(スペシャル5) 大きな斜め格子の抽象模様の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(スペシャル5) 大きな斜め格子の抽象模様の銘仙
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【番号】 S005
【名称】 大きな斜め格子の抽象模様の銘仙
【色柄】 赤、黄土、黒の3パターンの細長い山形模様と、2種類の抽象模様の5パターンを斜め格子状に織り出す。
     抽象模様は、線描風に織り出された惰円形と円形の2種で花のようにも見えるが不明。
     黒の部分は細かな格子紋を乱れなく織り出している。
     経糸と緯糸の両方に捺染し、その交差によって模様をくっきり織り出す伊勢崎が得意とした併用絣の技法。
     具象でもなく幾何学模様でもなく抽象柄をメインにした戦後的なデザイン。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、併用絣。
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)
【年代推定】 昭和29年(1954)
【所蔵者】  伊勢崎市
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↑ 水彩で描いた抽象画のようだ。
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↑ 惰円形と円形の2種の抽象柄。
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↑ 織の精度は高い。
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↑ 昭和29年(1954)、伊勢崎織物協同組合「伊勢崎銘仙」のポスターで女優の香川京子(1931~ )が着用している。
モデルの香川京子は、この時23歳なので、結婚適齢期のお嬢さんから若奥さん向けのデザインだったのだろう。
右側の文字は「珍絣・併用絣・緯総絣・千代田御召」




銘仙図鑑(スペシャル4) 太縞の地に象徴模様の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(スペシャル4) 太縞の地に象徴模様の銘仙
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【番号】 S004
【名称】 太縞の地に抽象模様の銘仙
【色柄】 サーモンピンク・白・朱・黒の小紋の4パターンを太い縦縞に織り出し、そこに黒と山吹色で象徴模様を乗せたデザイン。
     抽象柄は、動物紋のようにも、植物紋のようにも見える。
     黒の部分は細かな格子紋を乱れなく織り出している。
     経糸と緯糸の両方に捺染し、その交差によって模様をくっきり織り出す伊勢崎得意の併用絣の技法。
     具象でもなく幾何学模様でもなく抽象柄をメインにした戦後的なデザインだが、小紋の織り出しには伊勢崎銘仙の高い技術力が感じられる。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、併用絣。
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)
【年代推定】 昭和28年(1953)
【所蔵者】  伊勢崎市
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↑ サーモン、白、朱の境界はわざと乱してフリーハンド風に。
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↑ 黒の四角の中は動物のようにも見えるのだが・・・。
山吹色の模様は何だろう?
こうやって「これは何?」と考えさせることを狙っているのだろうか? 
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↑ 昭和28年(1953)、伊勢崎織物協同組合「伊勢崎銘仙」のポスターで女優の津島恵子(1926~2012)が着用している。
モデルの津島恵子は、この時27歳なので、若奥さん向けのデザインだったのだろう。
下部の文字は「珍絣・併用絣・緯総絣・千代田御召」

銘仙図鑑(スペシャル3) 6色パッチワーク風の銘仙(羽織) [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(スペシャル3) 6色パッチワーク風の銘仙(羽織)
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【番号】 S003
【名称】 6色パッチワーク風の銘仙(羽織)
【色柄】 赤・黄・暗緑・灰紫・白・黒の6色の地にそれぞれ模様を織り出し、パッチワーク風に組み合わせた大胆華麗なデザイン。
     赤地と暗緑の地には花唐草、黄色地にわずかに蚊絣、灰紫地に小さな花菱、白地に花柄、黒地には多色の曲線を織り出す。
     面積的には狭い黒地に多色の曲線の部分が全体のアクセントになっている。
     経糸と緯糸の両方に捺染し、その交差によって模様をくっきり織り出す伊勢崎得意の併用絣の技法。
     幾何学性の強い斬新なデザインだが、戦後まで引き継がれた伊勢崎銘仙の技術力を示す作品。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、併用絣。
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)
【年代推定】 昭和27年(1952)
【所蔵者】  伊勢崎市
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↑ 赤と黄色の地の面積が大きく、華やかなイメージを作っている。
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↑ 最高レベルに比べると、わずかだが織に荒さが感じられる。
よく売れた証拠なのかもしれない。
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↑ 今回の展示品は羽織だったが、伊勢崎市では、同じ柄の着物も所有している。
2010年1月24日「伊勢崎銘仙づくし」(銀座)で撮影。
http://plaza.rakuten.co.jp/junko23/diary/201001240001/
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↑ 昭和27年(1952)、伊勢崎織物協同組合「伊勢崎銘仙」のポスターで女優の津島恵子(1926~2012)が着用している。
モデルの津島恵子は、この時26歳なので、お嬢さん向けではなく、若奥さん向けということだったのだろうか?
下部の文字は「珍絣・併用絣・緯総絣・千代田御召」


銘仙図鑑(スペシャル2) 多色枡目の地に薔薇の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(スペシャル2) 多色枡目の地に薔薇の銘仙
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【番号】 S002
【名称】 多色枡目の地に薔薇の銘仙
【色柄】 多色使いの枡目模様の地に大輪の薔薇の花を織り出す。
     薔薇は黒とピンクの2パターン。
     地の枡目は赤・藍・緑・黄色・褐色の5色をそれぞれ濃淡3段階、合計15色ほどを織り出す。 
     同色の升目は斜めに連なる。
     経糸と緯糸の両方に捺染し、その交差によって模様をくっきり織り出す伊勢崎得意の併用絣の技法。
     多色を使いながら幾何学性を残す地色のデザイン、精度の高い薔薇の表現、ともに昭和初期、伊勢崎銘仙全盛期の芸術性と技術の高さを示す作品。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、併用絣。
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)
【年代推定】 昭和初期
【所蔵者】  伊勢崎市
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↑ 地に使われている色との「喧嘩」を避けて、あえて墨色で薔薇を織り出している。
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↑ 墨色の薔薇だけ見ると、シックなのだが・・・。

銘仙図鑑(スペシャル1) 赤地に雪椿模様の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(スペシャル1) 赤地に雪椿模様の銘仙

2012年1月、群馬大学医学部での講義(医療倫理)の翌日(17日)、JR両毛線に乗って、かっての銘仙産地である伊勢崎(群馬県)と足利(栃木県)を巡ってきた。

「いせさき明治館」(黒羽根内科医院旧館=旧今村医院:明治45年建築)では、展示されていた伊勢崎銘仙の優品を見せていただき、撮影してきたので、「銘仙図鑑」のスペシャル版として紹介する。
http://www.isesaki.ne.jp/kankoukyoukai/meijikan.html

銘仙として優れた作品であるだけでなく、産地と制作年代は確定できる銘仙は少ないので、その点でも資料的価値が高い。
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【番号】 S001
【名称】 赤地に雪椿模様の銘仙
【色柄】 赤の地に雪を被った椿の木を織り出す。
     地色の濃赤、椿の花のややオレンジ色がかった赤、葉の緑と雪の白さとの対比が鮮烈。
     薄いオレンジ色で表現された蕾、濃茶褐色の枝にも雪が乗り、表現は写実的で細かい。
     経糸と緯糸の両方に捺染し、その交差によって模様をくっきり織り出す伊勢崎得意の併用絣の技法。
     デザイン、織の精度から伊勢崎銘仙全盛期(昭和戦前期)の作品と思ったが、意外にも昭和29年の制作。
     戦後のこの時期にも、これだけの優品を作っていたことに感服。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、併用絣。
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)
【年代推定】 昭和29年(1954)
【所蔵者】  伊勢崎市
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銘仙図鑑(25) 薄桃色に赤と黒の菱形模様の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(25) 薄桃色に赤と黒の菱形模様の銘仙
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【番号】 025
【名称】 薄桃色に赤と黒の菱形模様の銘仙
【色柄】 薄桃色の地に斜めに交差する朱色の階段状の線を織り出す。
     階段は一定ではなく、階段線で区画される菱形は一定ではない。
     菱形の装飾は2種類。
     1つは薄桃色のままで中央に鍵の手に並んだ朱線の正方形3個がある。
     正方形の中には暗オリーブと暗い水色が入る。
     もう1つは赤く塗られ黒い影が施され、中央に黒で〇に十字線の模様がある。
     4つに区切られた〇の中は白と暗い水色を施す。
     赤と黒の菱形の部分には、緯糸にも赤と黒、さらに白を入れて、色彩を強めている。
【技法】 平織、経糸捺染、解し織り、部分併用絣。
【産地推定】 足利(栃木県)?
【年代推定】 昭和9~11年頃(1934~1936)?
【所蔵者】  YUKO
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↑ 階段線で区切られた薄桃色の菱形。階段が規則的ではないことがわかる。 
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↑ 赤と黒の菱形。
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↑ 〇に十字線の部分。

【着装】
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↑ 地色が薄い色なので、赤と黒の菱形模様がよく目立つ。
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↑ アールデコの影響を受けながら、かわいらしさが十分に感じられるデザイン。
きっと若い娘さんが着たのだろう。
(モデル&コーディネート:YUKO)

【関連リンク】
YUKO「気軽に楽しく美しく・銘仙の女」桃色に赤のジグザグライン、変形四角を赤と黒で織り出した着物 
http://yukomeisen.blog.so-net.ne.jp/2014-03-11-2

銘仙図鑑(24) 青の矢羽模様の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(24) 青の矢羽模様の銘仙
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【番号】 024
【名称】 青の矢羽模様の銘仙
【色柄】 鮮やかな濃い青地に銀鼠色で矢羽模様を織り出す。
     矢羽の大きさは1幅に2つ。
     矢羽の中には青鼠、黄色、赤の雲形がある。  
     赤の雲形には銀糸を入れる。   
     矢の軸の左右に銀鼠色の経糸を1本入れる。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、併用絣。
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)?
【年代推定】 昭和7~11年頃(1932~1936)?
【所蔵者】  YUKO
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↑ 矢羽模様の全景。矢羽柄としてはかなり細長い部類。
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↑ (左)青鼠と赤の雲形。(右)黄色と赤の雲形。 
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↑ 色付けは緯糸中心。
赤の雲形には銀の緯糸を入れている。
矢の軸の左右に銀鼠色の経糸が見える。

【着装】
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↑ 矢羽柄の大きさ(長さ)がよくわかる。
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↑ 赤の雲形がアクセントになっている。
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↑ 銘仙には赤やピンク、オレンジなど暖色系が多いが、この時代にも青が好きな娘はいたのだろう。
(モデル&コーディネート:YUKO)

【関連リンク】
YUKO「気軽に楽しく美しく・銘仙の女」青矢絣着物
http://yukomeisen.blog.so-net.ne.jp/2014-03-03-2

銘仙図鑑(23) 巨大な破れ麻の葉模様の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(23) 巨大な破れ麻の葉模様の銘仙
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↑ 不規則な斜線模様なのかと思うとそうではなく、巨大な破れ麻の葉模様の一部であることに気づく。
【番号】 023
【名称】 巨大な破れ麻の葉模様の銘仙
【色柄】 暗いオリーブ色の地に黒で織り幅の倍もある巨大な破れ麻の葉模様を織り出す。
     地には横に赤で平行線(双子持ち縞)を入れる。
     その中に赤、青、白の大小の楕円形の玉が浮かぶ。
     全体に強い玉虫光沢がある。
     大型していく銘仙デザインの極限形。
【技法】 平織、緯糸捺染、緯総絣。
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)?
【年代推定】 昭和10年(1935)前後?
【所蔵者】  にゃんこ
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↑ 破れ麻の葉模様の大きさは、織り幅の倍ほどもあり、模様の全体像が現れる場所はない。
裾に放射状の模様の出ていて、比較的わかりやすかったので撮ってみた。
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↑ 本来、破れ麻の葉模様とは、こんな感じなのだが・・・。
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↑ 破れ麻の葉の間に楕円形の玉がある意味もよく分からない。
あるいは、麻の葉についた水滴だろうか。
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↑ 「針」(染糸のわずかなずれ)は緯糸にしか見えない。緯糸に捺染して模様を織り出す緯総絣の技法。

【着装】
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↑ 強い玉虫光沢があることがわかる。
やはり、破れ麻の葉模様と気づかない人も多いかも。
(モデル&コーディネート:にゃんこ)

銘仙図鑑(22) 石榴(ざくろ)の花の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(22) 石榴(ざくろ)の花の銘仙
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【番号】 022
【名称】 石榴(ざくろ)の花の銘仙
【色柄】 織幅の3分の2は白地に枝に咲く赤い石榴の花を織り出す。
     葉は暗いオリーブ色と暗い青で表す。
     表現は写実的な油絵風だが、全体的にぼやけた感じがする。
     織幅の3分の1は灰紫色を段彩( グラデーション)に暈していく。     
【技法】 平織、緯糸捺染、緯総絣。
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)?
【年代推定】 昭和5~10年頃(1930~1935)?
【所蔵者】  sakura
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↑ 全体にぼやっとした感じがある。
最初、写真のピントが甘いのかと思ったが、そうではなかった。
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↑ 段彩はまるで筆で描いたように自然。でもこれは織り出しである。
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↑ 花弁の赤にも濃淡をつけるなど表現は写実的で細かい。
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↑ 「針」(染糸のわずかなずれ)は緯糸にしか見えない。
緯糸に捺染して模様を織り出す緯総絣の技法。

【着装】
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↑ 背中だけ見ると、片身代わりのようにも見える。
シックな着物と黄色の地に頭より巨大な椿の柄の帯のコーディネートがおもしろい。
(モデル&コーディネート:sakura)

銘仙図鑑(21) 椿の銘仙(羽織) [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(21) 椿の銘仙(羽織)
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【番号】 021
【名称】 椿の銘仙(羽織)
【色柄】 赤、黄、白で図案化された大きな椿の花を織りだす。花芯は緑青。
     地は青緑を太い黒線で区切りその中に斜線を入れる。
     花には部分的に「霞」をかける。
     全体に光沢感があり、織りは緻密である。
     図案化、織りの精度とも技術レベルはかなり高い。      
【技法】 平織、経糸捺染、解し織り、部分併用絣。
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)?
【年代推定】 昭和9~11年頃(1934~1936)?
【所蔵者】  sakura
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↑ 部分的に白い緯糸を入れる部分併用絣(半併用絣)の技法
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↑ 織りの精度の高さがわかる。

【着装】
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↑ 大きな花の髪飾りと比較すると、椿の花の大きさがよくわかる。
長羽織の背中に4輪だけの大胆な柄付け(着物は、銘仙図鑑22で紹介)。
(モデル&コーディネート:sakura)

銘仙図鑑(20) 片輪車文様の青紫の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(20) 片輪車文様の青紫の銘仙
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【番号】 020
【名称】 片輪車文様の青紫の銘仙
【色柄】 鮮やかな青紫の地に、大きな片輪車模様と抽象化された水波を織り出す。
     片輪車は、牛車の車輪が乾燥し割れるのを防ぐため水に漬けた平安時代の情景を文様化したもの。
     車輪は白で抜き、縁と接合線を鼠色と黄色で、車軸の回転を朱赤で表現する。
     白と薄紫で織りだされた水波はかなり抽象化されていて、唐草模様のようにも見える。
     表現の細かさ、織りの精度とも技術レベルはかなり高い。
     伊勢崎銘仙、全盛期の作例か?      
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、併用絣。
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)
【年代推定】 昭和5~10年頃(1930~1935)?
【所蔵者】  にゃんこ
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↑ 平安時代の車輪は加工した木材を組み合わせて作るが、その接合線がしっかりと表現されている。
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↑ 「針」(染糸のわずかなずれ)が経糸(たていと)と緯糸(よこいと)両方に出ている。経糸と緯糸の両方に型紙で捺染し柄を合わせて織る併用絣の技法であることがわかる。
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↑ 車軸部分。織りの精度の高さがよくわかる。

【着装】
銘仙20‐5 (2).jpg↑ 片輪車がつながって、大きなS字曲線に見える。
赤い巨大な笹の葉柄の帯とのコーディネートが素晴らしい。
(モデル&コーディネート:にゃんこ)

銘仙図鑑(19) 片輪車文様の銘仙(羽織) [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(19) 片輪車文様の銘仙(羽織)
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【番号】 019
【名称】 片輪車文様の銘仙(羽織)
【色柄】 銀鼠の地に、濃桃色と緑色で片輪車模様と水波を織り出す。
     片輪車は、牛車の車輪が乾燥し割れるのを防ぐため、水に漬けた平安時代の情景を文様化したもの。
     車は黒褐色で縁どられ、濃桃色の車には赤褐色で木目のような模様が入る。
     片輪車模様と水波はかなり抽象化されていて、アールデコの影響が感じられる。
     全体にかなり強い玉虫光沢がある。
【技法】 平織、経糸捺染、解し織り。
【産地推定】 秩父(埼玉県)?
【年代推定】 昭和5~10年頃(1930~1935)?
【所蔵者】  にゃんこ
銘仙19‐2.JPG
【着装】
銘仙19‐3.JPG↑ 着物も片輪車文様の銘仙(銘仙図鑑20で紹介)。
(モデル&コーディネート:にゃんこ)


銘仙図鑑(18) 桃色と浅葱色のツートンカラーの銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(18) 桃色と浅葱色のツートンカラーの銘仙
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【番号】 018
【名称】 桃色と浅葱色のツートンカラーの銘仙
【色柄】 桃色と浅葱色という正反対(色相環で正反対に位置する補色関係)のツートンカラーの地色に(間に細く白を染め残す)、黒で2パターン(潰しと細い縞柄)の変形四角形を織り出す。
織は緻密できわめて細かいシボがあり、全体に強い玉虫光沢がある。
色の彩度が高く光沢があるので、現代でいう「蛍光色」のように見える。
【技法】 平織、経糸捺染、解し織り。
【産地推定】 秩父(埼玉県)?
【年代推定】 昭和5~11年頃(1930~1936)?
【所蔵者】  YUKO
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↑ 強い玉虫光沢がある。
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↑ 細かいシボがある。

【着装】
捕色関係の2色の対比が強いインパクトをみせる。
袖も、背中も2色の染め分けになり、まるで違う布を継いだように見える。
こんな強烈な色柄、いったいどんな人が着たのだろう。
銘仙18-4.JPG銘仙18-5.JPG

【関連リンク】
YUKO「気軽に楽しく美しく・銘仙の女」 二色染めの銘仙
http://yukomeisen.blog.so-net.ne.jp/2014-03-04-4

銘仙図鑑(17) 花と蝶模様の空色の銘仙(単) [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(17) 花と蝶模様の空色の銘仙(単)
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【番号】 017
【名称】 花と蝶模様の空色の銘仙(単)
【色柄】 あざやかなシアンブルー(空色)の地に、花と蝶の模様を染め抜き風に織り出す。
     蕾(実?)に赤紫色を添える。
     花はケシか、蝶はアゲハで、全体にアールヌーボー風のデザイン。
     全体に弱い玉虫光沢がある。
     デザインは簡略だが、生地の質は良く、織りの技術も高い。
     銘仙全盛期の作例と推測。
【技法】 平織、経糸捺染、解し織り。
【産地推定】 秩父(埼玉県)??
【年代推定】 昭和5~10年頃(1930~1935)?
【所蔵者】  にゃんこ
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↑ 深い赤の地に柿の実柄の帯が空色の着物によく映えて美しい。
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(モデル&コーディネート:にゃんこ)

銘仙図鑑(16) 五角形模様の朱赤の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(16) 五角形模様の朱赤の銘仙
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【番号】 016
【名称】 五角形模様の朱赤の銘仙
【色柄】 細かな濃淡がある朱赤の地に4種類の五角形模様を織り出す。
     その4種類とは・・・、
     (1)薄い灰紫の五角形に花柄を乗せる
     (2)赤の五角形の一部に濃紫で菱格子
     (3)濃紫の五角形に白で菱格子、朱で曲線模様
     (4)濃紫の五角形に朱・黄・白で2種類の曲線模様
     花と実は、赤・黄色・白で表現し、暗紫色で縁取る。
     茎と葉は暗紫色と緑色で表現。
     花の部分にだけ、緯糸を白に変え、白の霞を掛ける部分併用絣。
【技法】 平織、経糸捺染、解し織り、部分併用絣。
【産地推定】 足利(栃木県)?
【年代推定】 昭和9~11年頃(1934~1936)?
【所蔵者】  YUKO
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↑(1)薄い灰紫の五角形に花柄を乗せる
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↑(2)赤の五角形の一部に濃紫で菱格子
銘仙16-4.jpg ↑(3)濃紫の五角形に白で菱格子、朱で曲線模様
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↑(4)濃紫の五角形に朱・黄・白で2種類の曲線模様

【着装】
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↑ 朱赤の地が大きいので、全体に「赤い着物」という感じで、かわいらしい。朱赤の中に濃紫と花が浮かんでいる感じ。
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↑ ただし、色味のコントラストが少ないので、柄の主張はあまりない。
(モデル&コーディネート:YUKO)

【備考】
図鑑15と基本デザイン、染料の色味が類似し、同じ工房で、同じ時期に、同じ職人(デザイナー)によって作られた「姉妹」であると推定される(詳しくは、図鑑15参照)。
銘仙15-7 (2).jpg銘仙16-6.jpg
↑ 着姿の比較(左が図鑑15、右が図鑑16)

銘仙図鑑(15) 花橘?模様・山形貼り合わせ風の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(15) 花橘?模様・山形貼り合わせ風の銘仙
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【番号】 015
【名称】 花橘?模様・山形貼り合わせ風の銘仙
【色柄】 4種類の三角形に近い台形(山形)を貼り合わせたようなデザインに花橘?を織り出す。
     その4種類とは・・・、
     (1)薄い灰紫の地に橘?の花と蕾
     (2)濃い灰紫の地に橘?の実
     (3)赤の地に3色(濃黄・薄黄・白)小さな四角を散す
     (4)赤の無地
     各々の山形は灰紫の線で仕切る。
     花と実は、赤・黄色・白で表現し、暗紫色で縁取り。
     茎と蕾のがくは暗紫色、葉は緑色で表現。
     花の部分だけ、緯糸を白に変え、白の霞を掛ける部分併用絣。
【技法】 平織、経糸捺染、解し織り、部分併用絣。
【産地推定】 足利(栃木県)?
【年代推定】 昭和9~11年頃(1934~1936)?
【所蔵者】  三橋順子
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↑(1)薄い灰紫の地に橘?の花と蕾。
銘仙15-3.jpg↑(2)濃い灰紫の地に橘?の実。
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↑(3)赤の地に3色(濃黄・薄黄・白)小さな四角を散す。
  金・銀箔散しを表現しているつもり?
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↑ 花の拡大。柄のズレはあまり大きくなく、織の技術は中の上。

【着装】
銘仙15-7 (2).jpg
↑ 全体に赤味が勝り、かわいらしい印象。その中に花を含む山形が白っぽく浮き上がる。ただし、花も実もあまり目立たない。
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↑ 近寄ると、ああ、花柄なのだ・・・とわかるが、柄の大きさや色味的にそれほど主張はしていない。
(モデル&コーディネート:YUKO)

【「姉妹」の銘仙】
室内でYUKOさん所蔵の銘仙の色柄の撮影をしようとした時、「あれ?私が持ってきた銘仙はまだ袋から出していないのに、なんでここにあるのだろう?」と思った。
それほど私が持っていった銘仙(図鑑15)と、印象が似た銘仙(図鑑16・次回掲載)がYUKOさんの所蔵品の中にあった。
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↑ 並べてみて、びっくり。
基本の柄は、山形と五角形と異なるが、色味がそっくりなのだ。
特に花の周囲の薄い灰紫の色味はまったく同じ。
左で茎やがくに使われている暗紫色は、右では五角形に使われている。
間違いなく、同じ調合の染料だ。
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↑ 花の部分だけを拡大すると、さらに類似がはっきりする。
花の形こそ違え、花を構成する色味(赤・黄・白・濃紫)がまったく同じで、花の部分だけ緯糸を白に変えて霞をかける技法も同じ。

つまり、この2つの銘仙は、同じ工房で、同じ時期に、同じ職人(デザイナー)によって作られた「姉妹」であると推定される。
そうならば、生まれて(生産)、世に出て(流通)、別々の人に着られて、約75年ぶりに再会したことになる。

【関連リンク】
YUKO「気軽に楽しく美しく・銘仙の女」 赤地花と実模様着物
http://yukomeisen.blog.so-net.ne.jp/2014-03-04-1


銘仙図鑑(14) 短冊貼り合わせ風の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(14) 短冊貼り合わせ風の銘仙
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【番号】 014
【名称】 短冊貼り合わせ風の銘仙
【色柄】 5種類の異なった色柄の長方形(短冊)を貼り合わせたようなデザインを織り出す。
     その5種類とは・・・、
     (1)黒・白・赤・黄色の乱れ縦縞
     (2)赤地に黒灰色で木の葉模様
     (3)鶯色の無地
     (4)赤地に梅の花(面積は他の柄の半分)
     (5)鶯色に梅の花+赤の無地(境界は/線)の合わせ
     ともかく、きわめて凝った仕事(柄付)をしている。
     糸の質も良く、織の技術も高い。
     伊勢崎銘仙、最盛期の作例と思われる。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、併用絣。
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)?
【年代推定】 昭和5~8年頃(1930~1933)?
【所蔵者】  三橋順子
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↑ 短冊パターン1。黒・白・赤・黄色の乱れ縦縞)
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↑ 短冊パターン2。赤地に黒灰色で木の葉模様。
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↑ 短冊パターン3。鶯色の無地と赤地に梅の花(面積は他の柄の半分)
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↑ 短冊パターン4。鶯色に梅の花+赤の無地(境界は/線)の合わせ
片袖を見て、柄付は4パターンかと思ったら・・・、
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↑ 裏返したらもう1パターンあった。鶯色に梅の花+赤の無地(境界は/線)の合わせ
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↑ 梅の花の表現。
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↑ 柄のズレは少なく、織の技術は高い。

【着装】
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↑ たたんだ状態では、柄付があまりに繁雑で「デザインに凝り過ぎた失敗作?」という印象だった。
ところが、実際に着装してみると、それぞれの色柄のバランスが良く、赤地と乱れ縞がポイントになっていて、意外に明るい印象の着物であることがわかった。
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↑ しかし、派手ではあることは間違いない。いったいどんな女性がこの銘仙を着たのだろうか? 
普通のお嬢さんが着たとはちょっと思えない。
やはり、自らを広告塔にするような仕事の女性、たとえばカフェの女給さんとかだろうか?
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↑ モデルさんが振り向いたとき、唯一の斜めラインが背中に来て、実に効果的なアクセントになっていることに気づいて、後ろ姿も撮影。
(モデル&コーディネート:YUKO)

【参照リンク】http://yukono-1965.blog.so-net.ne.jp/2010-04-15

銘仙図鑑(13) 薔薇と円弧紋の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(13) 薔薇と円弧紋の銘仙
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【番号】 013
【名称】 薔薇と円弧紋の銘仙
【色柄】 サーモンピンク(薄桃)の地に洋画風の赤薔薇と円弧文を織り出す。
     薔薇の花は濃淡の紅色と黄土色、葉は緑と黄土色、鼠色で影をつける写実的な表現。
     円孤文は桃色を基調。
     2パターンがあり、いずれも同心円で3区に分ける幾何学的文様。
     中心に6弁花紋、外区に三角紋を置き、内区はパターンの異なる花紋。
     経糸・緯糸両方に染色を施し、模様を織り出す併用絣の技法。
     直交組織では表現が難しい細かな円弧紋だが、文様の乱れは最小限に止まる。
     デザイン、染織ともにハイレベルで、伊勢崎銘仙、最盛期の作例と思われる。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、併用絣。
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)?
【年代推定】 昭和5~8年頃(1930~1933)?
【所蔵者】  三橋順子
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↑ 円弧がほとんど乱れていない。

銘仙図鑑(12) チューリップの銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(12) チューリップの銘仙
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【番号】 012
【名称】 チューリップの銘仙
【色柄】 黒の地にアールヌーボー風のチューリップを織り出す。
     葉は濃淡のピンクと青緑色、葉脈は黒。
     花は黄色・白鼠色・青緑色で、花茎は白鼠色で表現。
     緯糸は黒。
     典型的かつ高度な解し織り技法による模様銘仙。
     ヨーロッパ移入のデザインと日本の染織技術が合致した銘仙全盛期の傑作のひとつ。
【技法】 平織、経糸捺染、解し織り。
【産地推定】 秩父(埼玉県)?
【年代推定】 昭和2~8年頃(1927~1933)?
【所蔵者】  三橋順子
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↑ 経糸のずれはきわめて少ない。

【着装】
着てみると、思っていたより青緑色とピンクのバランスが良く、黄色と白鼠色のチューリップの大きな花が良く目立つ。
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(モデル&コーディネート:YUKO)

【関連リンク】
YUKO「気軽に楽しく美しく・銘仙の女」 チューリップ柄銘仙着物
http://yukomeisen.blog.so-net.ne.jp/2014-04-20

銘仙図鑑(11) 臙脂と銀鼠の縞銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(11) 臙脂と銀鼠の縞銘仙
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【番号】 011
【名称】 臙脂と銀鼠の縞銘仙
【色柄】 臙脂、銀鼠、黒の三色のシンプルな縦縞だが、
     縞の太さを測定してみると・・・・。  
      臙脂 5.2mm
      銀鼠 2.6mm
      黒  1.3mm
      銀鼠 2.6mm
      黒  1.3mm
      銀鼠 2.6mm
      臙脂 5.2mm
     つまり、4・2・1・2・1・2・4という整数比になっている。
     縞の太さをリズムミカルに変えることで、粋な雰囲気を出している。
     縞銘仙は、銘仙の中でもっとも技法的に単純なだけに、縞の色、配列、太さで、  センスが問われる。
【技法】 平織、経糸捺染
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)??
【年代推定】 昭和2~11年頃(1927~1936)?
【所蔵者】  三橋順子
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↑ 銀鼠を地色と見れば、臙脂と黒の双子持ち縞と見ることができる。

銘仙図鑑(10) 夏水仙の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(10) 夏水仙の銘仙
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【番号】 010
【名称】 夏水仙の銘仙
【色柄】 暗い青紫の地に淡黄色と緑で陰陽(ネガ・ポジ)2パターンの水仙の花を織り出す。
     経糸のみを捺染した解し織り技法で、緯糸は暗紫。
     花の形の崩れは少なく、技術レベルは高い。
     経糸に生糸のセラシンを少し残したシャリ感のある糸を用いる。
     単に仕立てられていることから、夏水仙をデザインした初夏用の銘仙と思われる。
【技法】 平織、経糸捺染、解し織り
【産地推定】 秩父(埼玉県)?
【年代推定】 昭和5~11年頃(1930~1936)?
【所蔵者】  三橋順子
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↑ 陽画(ポジ)の表現
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↑ 陰画(ネガ)の表現
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↑ 経糸に1本目立つツレがあるが、全体的には乱れは少ない。

銘仙図鑑(9) 紅梅の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(9) 紅梅の銘仙
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【番号】 009
【名称】 紅梅の銘仙
【色柄】 銀鼠の地に紅梅を織り出す。
     花は紅色の濃淡、輪郭と花芯は黒。
     枝は黒、一部に薄緑。
     併用絣の技法で、日本画風の紅梅を見事に表現している。
     樹皮についた苔の表現や、梅の花の周囲の地色を白く抜くなど技巧は細かい。
     ただ、梅の花弁の形はやや崩れている。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、併用絣
【産地推定】 足利(栃木県)??
【年代推定】 昭和7~11年頃(1933~1936)?
【所蔵者】  三橋順子
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↑ 花の細部。花の周囲の地色は白く抜いている。やや花弁の形に崩れが見られる。
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↑ 枝の細部。薄緑色の苔の表現?

銘仙図鑑(8) 蛇の目傘模様の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(8) 蛇の目傘模様の銘仙
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【番号】 008
【名称】 蛇の目傘模様の銘仙
【色柄】 黒地に意匠化された2種類の蛇の目傘を織り出す。
     青緑色と黒の傘4つに、やや大ぶりの銀鼠色と赤の笠1つの割で配す。
     緯糸は黒だが、一部にアクセントとして銀糸を入れている。
     経糸のみの捺染で、曲線が多い蛇の目傘の意匠を見事に表現している。
     また、突き出た傘の骨先の色処理など芸が細かい。
     デザイン・染め・織りともに高い技術レベルの銘仙全盛期の優品。
【技法】 平織、経糸捺染、解し織
【産地推定】 秩父(埼玉県)?
【年代推定】 昭和7~11年頃(1932~1936)?
【所蔵者】  三橋順子
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↑ 銀の緯糸を入れている部分。

銘仙図鑑(7) 斜線で描いた抽象画のような銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(7) 斜線で描いた抽象画のような銘仙
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【番号】 007
【名称】 斜線で描いた抽象画のような銘仙
【色柄】 薄ピンク、黒、赤、暗青の4色の斜線で抽象画のような柄を織り出す。    
     4色にはそれぞれ濃淡がある。
     経糸と緯糸が同色の部分は濃く、違う色の部分は薄く出ている?
     現代アート(抽象画)っぽいと言えば聞こえは良いのだが・・・。
     小学生がクレヨンで試し描きしたようにも見える。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、大絣・解し織併用(併用絣)
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)??
【年代推定】 昭和30年代(1955~1965)??
【所蔵者】  三橋順子


銘仙図鑑(6) 交差するリボンの赤銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(6) 交差するリボンの赤銘仙
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【番号】 006
【名称】 交差するリボンの赤銘仙
【色柄】 真っ赤な地に複雑に折れ曲がり交差するリボン?を織り出す。    
     リボンは、黒で縁取り、中に灰色で9本の細い平行線。
     交点は斜交したり直交したり。交点の内部は格子状。
     強烈な赤の地色と大胆でモダンな柄の組み合わせは、かなりのインパクトがある。
     いったいどんな人が着たのだろうか?
     技術的には、斜め線をきれいに織り出していて、精度は高い。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、大絣・解し織併用(併用絣)
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)?
【年代推定】 昭和初期(1926~1936)??
【所蔵者】  三橋順子
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↑ 斜交
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↑ 直交

【着装】
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(モデル&コーディネート:YUKO)

離れて見ると、リボンの中の鼠色の平行線が見えなくなりリボンが白く見えて、地色の赤とのコントラストがいっそう強まる。
鮮烈な赤地の中を、屈曲しながら走る白い線が実に印象な典型的なアールデコ・デザインの銘仙。

【関連リンク】
YUKO「気軽に楽しく美しく・銘仙の女」 交差する屈曲した直線模様の赤銘仙
http://yukomeisen.blog.so-net.ne.jp/2014-03-23-1

【追記】
Yahooオークションによく似た銘仙が出品されていた。
残念ながら落札できなかったが、画像は保全したので紹介しておく。
銘仙6-11.jpg銘仙6-10.jpg
銘仙6-12.jpg
リボンの交差部分が黄土色っぽく見える点が異なっているが、写真の発色や照明の違いなのかもしれない。

銘仙図鑑(5) 柿の実の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(5) 柿の実の銘仙
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【番号】 005
【名称】 柿の実の銘仙
【色柄】 柿色の地に、柿の木になった柿の実を織り出す。    
     熟れた実は、黒の縁取りに濃淡の桃色で表現。
     まだ熟れていない実は、黒の縁取りに暗灰色と薄桃色。
     葉と枝は白抜きで表現され、葉に緑を加え、葉脈を黒で表している。
     柿の実は、色的には、柿というより石榴か桃のようにも見える。
     しかし、やや扁平な形態や、へたの具合などから、やはり柿のつもりなのだろう。
     地色を柿色にしたため、こうした変な色味になってしまったのか?
     季節感が強烈な色柄で、やはり柿の実が色づく秋にしか着られないと思う。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、大絣・解し織併用(併用絣)
【産地推定】 技法からは伊勢崎(群馬県)と推定される。
      しかし、やや荒い感じもするので足利(栃木県)かもしれない。
【年代推定】 昭和初期(1926~1936)?
【所蔵者】  三橋順子
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↑ 熟れた実
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↑ 熟れていない実

銘仙図鑑(4) 草花文に重ね菱の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(4) 草花文に重ね菱の銘仙
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【番号】 004
【名称】 草花文に重ね菱の銘仙
【色柄】 群青色の地に、白抜きで草花文と重ね菱文を織り出す。    
     重ね菱文は、地色の群青に加えて白・赤・灰青の菱形と薄桃の小丸の4色で表現。
     すっきりまとめているが、かなり細かな仕事をしている。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、大絣・解し織併用(併用絣)
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)?
【年代推定】 昭和30年代年(1955~1965)??
【所蔵者】  三橋順子

銘仙図鑑(3) 太線直交の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(3) 太線直交の銘仙
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【番号】 003
【名称】 太線直交の銘仙
【色柄】 暗紫色の地に、濃いピンクと銀鼠色で直交する太線を織り出す。    
     銀鼠色と銀鼠色の交点は白色に見える。
     シンプルだか、モダンな感じがするデザイン。
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、大絣・解し織併用(併用絣)
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)?
【年代推定】 昭和30年代年(1955~1965)??
【所蔵者】  三橋順子


銘仙図鑑(2) 連続・色矢絣の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(2) 連続・色矢絣の銘仙
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【番号】 002
【名称】 連続・色矢絣の銘仙
【色柄】 縁取りの白線を挟んで左右上下に連続する大きな色矢絣を織り出す。
     矢絣の色は、赤・青緑・黄土の3色。
     さらに、青緑と黄土には細かな黒格子文、赤の部分に金緯糸。
     絣銘仙としては、高度の技術。
     一幅に2柄という柄の大きさといい、色の鮮やかさといい、強烈な印象がある。
     いったいどんな人が着たのだろう?
【技法】 平織、経糸・緯糸捺染、大絣・解し織併用(併用絣)
【産地推定】 伊勢崎(群馬県)?
【年代推定】 昭和7年~11年(1932~1936)?
【所蔵者】  三橋順子
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↑ 金の緯糸が入っている部分。

銘仙図鑑(1) 赤い折鶴の銘仙 [銘仙図鑑]

銘仙図鑑(1) 赤い折鶴の銘仙
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【番号】 001
【名称】 赤い折鶴の銘仙
【色柄】 一幅に一柄の大きな赤い折鶴を織り出す。
    今にも羽ばたいて自力飛行しそう。
    地色は薄鼠色ながら、強い玉虫光沢があり、光線の具合によって赤鼠色~青鼠色に変化する。
【技法】 平織、経糸捺染・解し織
【産地推定】 秩父(埼玉県)?
【年代推定】 昭和初期(1926~1936)?
【所蔵者】  三橋順子
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↑ 写真でも上半分は青みが強く、下半分は赤みが強く見える。
実際には、もっと複雑に見える。

※ 産地と年代は、私の推定なので当てになりません。
?は「…かな?」、??は「…かもしれない」くらいのニュアンスです。

「銘仙図鑑」について [銘仙図鑑]

「銘仙図鑑」は、主に私(三橋順子)と友人YUKOが所蔵する銘仙コレクションを紹介するものです。

銘仙は、先染(糸の段階で染める)、平織(経糸と緯糸の直交組織)の絹織物で、大正時代から昭和戦前期に、女性の衣料として大流行しました。

銘仙の生産は、昭和40年(1965)頃にほぼ終わりましたが、その華やかな色彩と大胆なデザインは、今も熱烈なファンを持っている着物です。

「銘仙図鑑」では、単にその色柄を紹介するだけでなく、2つのポイントに留意しています。
1つ目は、着物が着る物であることを忘れないように、可能な限り着姿を載せること。
2つ目は、不十分ではあるものの、生産地と制作年代の推定を記すこと。

私の産地・年代推定は、実際に銘仙の生産に携わった方や、銘仙コレクターの方に教えていただいたことに加えて、若干の技術史的な知識に基づいています。

ただ、銘仙があまりにも多種多様、かつ生産量が膨大であり、その一方で年代・産地が明確な製品が保存されていることが少なく、推定の根拠となる基準作例が乏しいのが実情で、正確な産地&年代推定はきわめて困難です。

私の推定も、確度にはまったく自信がありません。
産地・年代の「?」は「…かな?」、「??」は「…かもしれない」くらいのニュアンスでとご理解ください。

「銘仙図鑑」の目標は「めざせ銘仙100枚!」なのですが、銘仙ならなんでも・・・、というわけではなく、織物として、服飾デザインとしてある程度のレベルを維持し、さらに私たち(YUKOと私)のポリシーとして着姿を重視するということになると、なかなか選定が大変です。

そのため、50~60点くらいまでは、私たちのコレクションで行けそうですが、足りない部分は、銘仙愛好家の友人のご協力をいただかないと・・・。
すでに何点か掲載させていただいていますが、今後も掲載のお願いをすると思いますので、その折にはよろしくお願いいたします。

いらっしゃいま~せ [ご挨拶]

9月13日(木)

「続・順子の着物大好き」にようこそ。

このブログは、「続・たそがれ日記」(2005年1月~2012年8月)の着物関係記事のアーカイブとして、着物大好きな私(三橋順子)の着物ライフ、着物文化論、銘仙図鑑などを収録していく予定です。

なお、それ以前の着物ライフについては「順子の着物大好き」をご覧ください。http://www4.wisnet.ne.jp/~junko/1/

また「続・たそがれ日記」アーカイブとしては、以下のようなものがあります。

「続・たそがれ日記」アーカイブ(性)
http://zoku-tasogare-sei.blog.so-net.ne.jp/
「続・たそがれ日記」アーカイブ(仕事)
http://zoku-tasogare-2.blog.so-net.ne.jp/
「続・たそがれ日記」アーカイブ(日常)
http://zoku-tasogare-3.blog.so-net.ne.jp/
いずれも建設途上ですが、ご参照ください。

2012年9月以降については、「続々・たそがれ日記」を、ほぼ毎日更新中です。
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/

それでは、よろしくお願いいたします。

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